血管性認知症
血管性認知症とは
血管性認知症は、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)によって脳の血流が悪くなり、脳細胞が死んでしまうことによって起こる認知症です。これは日本人の高齢者によく見られるタイプで、認知症全体の約20%を占めるといわれています。
特徴的なのは、症状が突然現れることが多い点と、症状が階段状に進行することです。これは脳血管障害が繰り返されるためと考えられています。アルツハイマー型認知症とは異なり、「まだら認知症」といって、できることとできないことの差が大きく出るのも特徴です。

症状の特徴
血管性認知症の症状は、脳のどの部位が障害されたかによって異なりますが、以下のような症状が見られます:
- 記憶障害:直近の出来事を忘れやすくなりますが、昔の記憶は比較的保たれやすいです。
- 注意・集中力の低下:一度に複数のことを行うのが難しくなります。
- 感情コントロールの困難:怒りっぽくなる、涙もろくなるなど感情が不安定になります。
- 運動障害:手足の麻痺やふらつき、歩行障害を伴うこともあります。
これらの症状は日によって変動することがあり、「今日は調子が良いけれど、翌日は混乱する」といったパターンもあります。
検査と診断
以下のような検査を行い、正確な診断を目指します。
- 画像検査(CT、MRI):脳梗塞や脳出血の有無、脳萎縮の程度を確認します。
- 認知機能検査:改定長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)などを使用し、記憶力や注意力を評価します。
- 血液検査:糖尿病や脂質異常症など、認知症のリスクとなる病気の有無を調べます。

治療
血管性認知症に対しては、根本的な治療は難しいものの、進行を抑えるための治療が重要です。
- 再発予防:高血圧や糖尿病の管理、抗血小板薬(アスピリンなど)の内服。
- 生活指導:禁煙、減塩、適度な運動、栄養バランスの良い食事。
- リハビリ:身体・認知機能のトレーニング。
- 精神面のケア:うつ病などを伴う場合は、抗うつ薬の使用や心理的支援も行います。
入院治療について(要約)
症状が進行し、在宅介護が難しい場合には、専門の医療機関への入院治療が検討されます。ご家族の負担を軽減するためにも、早めの相談をお勧めします。