パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状には、
体の動きに関する症状である運動症状 それ以外の症状である非運動症状
の2種類があります。
パーキンソン病の症状には、
体の動きに関する症状である運動症状
それ以外の症状である非運動症状
の2種類があります。
運動症状
パーキンソン病に特徴的な運動症状には、振戦、無動、強剛、姿勢の不安定性の4つがあります。
振戦
座っているなど何もしていない時に、手足が小刻みに震えます。何かをしようとする時には震えは止まることが多いです。片方の手や足から始まることが一般的です。
無動
素早い動きが出来なくなります。歩くスピードが遅くなり、話し声も小さくなります。
強剛
筋肉がこわばって硬くなり、体をスムーズに動かせなくなります。
姿勢の不安定性
病気が進行すると、体が傾いた時に姿勢を立て直すことが難しくなってきます。これを姿勢反射障害と呼び、転倒の原因となります。
非運動症状
自律神経の症状
90%以上の方に便秘が生じます。その他にも、頻尿や、立ち上がったときに血圧が低下する起立性低血圧が生じます。
感覚の症状
嗅覚障害が生じ、食べ物などの匂いがわかりにくくなります。
睡眠の症状
不眠になる方がいます。また、レム睡眠行動障害という睡眠中に生じる症状を時に認めます。大声で寝言を言ったり、腕を上げて何かを探すしぐさをしたり、殴る、蹴るなどの激しい動作がみられます。
認知機能の低下
物事の段取りが悪くなったり、事態の変化に臨機応変に対応できなくなる遂行機能障害が生じます。
ホーン・ヤール分類
パーキンソン病の症状の進行スピードは患者さんによって異なります。 症状の程度をみたり、治療の方針を判断する一つの目安として「ホーン・ヤールの重症度分類」があります。軽症の1度から、重症の5度に分類されます。
症状が出現する時期
パーキンソン病と診断される10年以上前から、非運動症状が出現していると言われています。その後、徐々に症状が増え、強くなっていきます。
パーキンソン病の診断方法
パーキンソン病の診断は、
1.パーキンソニズムの存在をみつける
2.そのパーキンソニズムの原因が、パーキンソン病あるいはその他の病気のどちらから生じているかを、調べる
ことで行われます。
パーキンソニズムとは
前述の無動に加えて、振戦、強剛、姿勢反射障害の3つのうちいずれか1つ以上を認める状態を、パーキンソニズムといいます。簡単にいうと、「パーキンソン病のような症状がある」状態です。
パーキンソン病とそれ以外の病気を区別する方法
症状
パーキンソン病の方では、体の左右どちらかから症状が始まり、その後も症状にはある程度の左右差を認めることが一般的です。一方で、症状が始まってから、数年以内によく転んだり、激しい自律神経症状(起立性低血圧など)が出現する場合は、パーキンソン病の可能性は低くなります。
MRI検査
MRI検査を行い、脳の形を調べます。パーキンソン病の方のMRI画像は、健康な方のMRI画像とほとんど区別がつきません。何らかの異常な点があれば、パーキンソン病以外の病気の可能性が高くなります。
核医学検査(ドパミントランスポーターシンチグラフィ)
脳の中でドパミンを放出する神経(ドパミン神経)が、どの程度減っているかを測定することができます。パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などでは、ドパミン神経が減っています。一方、血管障害性パーキンソニズムや性常圧水頭症などでは、ドパミン神経は正常なままです。
薬剤への反応性
レボドパという、脳の中でドパミンに変化する薬剤を治療として使用します。パーキンソン病の方では、レボドパにより症状がよく改善します。一方、その他の病気ではあまり改善しません。
パーキンソン病の治療薬
パーキンソン病の主な治療薬には、
レボドパ ドパミンアゴニスト> MAO-B阻害薬
の3種類があります。
パーキンソン病の主な治療薬には、
レボドパ
ドパミンアゴニスト
MAO-B阻害薬
の3種類があります。
レボドパ
パーキンソン病の症状は脳内のドパミン神経が減少することによって出現します。レボドパは脳内でドパミンになり、ドパミン神経の減少を補います。
薬の説明
最も副作用が少なく、効果の強い薬です。症状に合わせ、過不足ない量を使用します。 ただ、パーキンソン病が進行すると、薬の効果時間が短くなったり、身体が勝手に動くジスキネジアと呼ばれる不随意運動が出現することがあります。
気を付ける点
レボドパは胃酸で溶けて十二指腸で吸収されます。胃酸の分泌を抑える「胃薬」を飲んでいる場合、レボドパの効果が低下する可能性があります。
ドパミンアゴニスト
脳の中のドパミン受容体に作用することにより、ドパミン神経の減少を補います。
薬の説明
レボドパの次に効果の強い薬です。レボドパよりもジスキネジアの副作用は少ないですが、幻覚(特に幻視)や妄想などの精神症状の副作用が出現しやすくなります。また、日中に突然眠くなってしまうことがあるため、自動車運転は出来なくなります。
気を付ける点
ドパミンアゴニストのうちプラミペキソールは、腎機能の低下している方では副作用に注意して使用する必要があります。腎障害のある方にはロピニロールの方が安全に使用することが出来ます。
MAO-B阻害薬
ドパミンを分解する酵素であるMAO-Bを阻害することで、脳内のドパミン濃度を上昇させる薬です。
薬の説明
現在は3種類のMAO-B阻害薬が存在します。日本ではエフピーしか使うことが出来ませんでしたが、2018年以降、アジレクトやエクフィナといった新しいMAO-B阻害薬が発売されました。パーキンソン病に対する効果は比較的小さく、症状の軽いパーキンソン病の方にまず使用されることが一般的です。
気を付ける点
アジレクトやエクフィナは1日1回の内服でよいという利点がありますが、薬価が高いというのが難点です。
どの薬で治療を開始するか
患者さんの年齢、症状の強さ、生活環境などによって、どの薬で治療を開始するかが変わってきます。例えば、65歳以上の方では精神症状の副作用が少ないレボドパがよいと言われています。選択の一例をお示しします。
パーキンソン病のDBSについて
DBSはDeep Brain Stimulationの略で、日本語では脳深部刺激療法と言います。手術により脳に電極を差し込み、脳の深い部分に対して電気刺激を持続的に行います。目標とする脳の部分の細胞活動を抑制することにより、パーキンソン病の症状改善につながります。
どれくらいよくなるのか
DBSの治療効果の上限は、基本的にはパーキンソン病薬の効果の上限とほぼ同じです。DBSを行うと、オフの状態が改善し、パーキンソン病薬の効果がオンオフなく1日持続した効果が続く状態に近くなります。言い換えると、元々パーキンソン病薬の効果が乏しくなっている方には、DBSの効果も乏しくなります。
ただし、振戦の症状は、パーキンソン病薬でよくならなくても、DBSで効果が得られます。
DBSでよくならない症状
残念ながら、認知症はよくなりません。
手術の合併症
脳に電極を差し込む手術なので、多少なりとも合併症が生じます。確率は高くありませんが、頭蓋内出血 約3%、肺塞栓症 0.6%などが報告されています。
手術を希望する場合
手術の適応があるかどうかを、一般的にはまず入院して検査します。その後、脳神経外科で手術を行い、DBSの刺激条件や内服薬の調整を行います。和歌山県内であれば和歌山県立医科大学附属病院でDBS治療を行うことが出来ます。
パーキンソン病のリハビリテーション
パーキンソン病の治療の中心となるのは、薬物療法とリハビリテーションです。普通に動くことのできる患者さんであれば、ご自宅で十分なリハビリテーションを行うことが可能です。
このページでは、自宅で気軽に出来るリハビリメニュー3つをご紹介いたします。もっと詳しく知りたいという方は、下記のホームページをご覧ください。いずれもパーキンソン病の薬を製造している製薬会社さんのホームページです。
歩行練習・ウォーキング
30分程度、できるだけ大股で大きく腕を振って歩いて下さい。体力維持だけでなく、筋力訓練やストレッチを兼ねた運動になります。パーキンソン病の方は動作が小さくなってしまいますので、意識して身体を大きく使うことが大事になります。
ストレッチ
パーキンソン病の方は筋肉が固くなるため、関節の曲げ伸ばしの運動や前屈姿勢を矯正するストレッチが大切です。両手を壁について背を伸ばしたり、床に手をついてゆっくり上体をおこすことで、背筋を伸ばすストレッチを行うことができます。発声・発語訓練
パーキンソン病の方は、単調で小さく不明瞭な発声になります。大きくはっきりした声で、本や新聞を読む、歌を歌うことが推奨されています。
リハビリテーションの注意点
決して無理をせず、疲れない程度に行ってください。また、強い痛みを起こすような運動は避けて下さい。わからないことや不安な点があれば予め主治医の先生にご相談下さい。