アルツハイマー病
アルツハイマー病とは
アルツハイマー病では、脳の中にアミロイドβと呼ばれるタンパク質のかたまりが蓄積し、神経細胞の働きが障害されます。その結果、神経細胞の数が減り、脳の萎縮が進むとされています。アミロイドβは、認知機能が低下する10~20年以上前から、脳の中にたまり始めていることが知られています。
軽度認知障害(MCI)
アルツハイマー型認知症の一歩手前の段階を軽度認知障害と呼びます。軽度認知障害では記憶障害が中心で、以前に比べて物忘れが目立ってきます。
前日の食事の内容が思い出せない
新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる
仕事上のミスが増えた
アルツハイマー型認知症への進行
軽度認知障害では、買い物や家事など少し複雑な動作が難しくなりますが、自立した生活を送ることができます。しかし、さらに認知機能が低下してアルツハイマー型認知症に進行すると、料理や着替え、金銭管理など生活に必要な動作が徐々にできなくなり、介護が必要な状態になります。

アルツハイマー病の検査
医師による問診をうけた上で、認知機能検査を行います。その結果、アルツハイマー病などの認知症が疑われる場合は、CT検査やMRI検査などの画像検査や、その他必要な検査を行い、認知症の原因を調べます。
認知機能検査
改定長谷川式簡易知能評価スケールなどを使用し、見当識や記憶など脳の働きを総合的に評価します。点数によって認知症の重症度を把握し、また脳のどの機能が低下しているかを明らかにすることができます。
画像検査
頭部MRI検査やCT検査により脳の萎縮や脳梗塞の有無を確認します。記憶を司る海馬という脳の部分の萎縮が、アルツハイマー病に特徴的です。

血液検査
体のホルモン異常やビタミン欠乏により認知症が生じる場合もあります。血液検査で甲状腺ホルモンやビタミンの値を確認することが重要です。
アルツハイマー病の治療
内服薬
コリンエステラーゼ阻害薬
ドネペジル(商品名:アリセプト)やガランタミン(商品名:レミニール)といった薬が含まれます。記憶や学習に関わる「アセチルコリン」という物質の分解を抑えることで、神経細胞の働きを補い、症状の進行を一時的に抑えます。吐き気・下痢・食欲不振といった消化器系の副作用が出やすいとされています。
NMDA受容体拮抗薬
メマンチン(商品名:メマリー)という薬があります。症状の進行したアルツハイマー病の方に使用され、コリンエステラーゼ阻害薬と併用されることもあります。めまいやふらつきといった神経系の副作用が出やすいとされています。
点滴
抗アミロイドβ抗体療法
レカネマブ(商品名:レケンビ)という新しい薬が使用できるようになっています。アルツハイマー病の型の脳に蓄積しているアミロイドβを除去し、認知機能の低下を抑制します。2週間に1回の点滴治療を継続します。副作用として脳出血や脳浮腫に注意が必要で、定期的なMRI検査が推奨されています。

非薬物療法
認知機能訓練(認知リハビリテーション)
計算・文字の練習、塗り絵などを通じて脳を刺激し、残存能力を活かします。
生活環境の整備
ストレスの少ない環境が、行動異常の予防にもなります。
家族への支援
介護者の負担軽減のため、介護保険サービスの活用や医療・福祉との連携が重要となります。
徘徊や興奮への対応
認知症に伴って現れる行動や心理的な症状のことをBPSDと呼び、徘徊や興奮、妄想などがあります。必要に応じて、抑肝散という漢方薬を使用したり、リスペリドンなどの抗精神病薬を使い治療します。BPSDにいより自宅や施設での介護が難しくなったとき、専門の病院へ入院することで、介護者の負担を軽減することができます。
入院治療について(要約)
認知症が進行し自宅や施設での介護が難しくなったとき、専門の病院へ入院することで、介護者の負担を軽減することができます。認知症の方の徘徊や暴言などで困ったとき、ご家族様だけで悩まず、医療機関の力を借りることをおすすめいたします。